泡沫

どうも、とりあえず自分の好きなものについて適当に語るだけの簡単なブログです。暇な人や物好きは見てってね。

ウルトラマンティガの神回にして異色回、うたかたの…。

私がウルトラマンティガで一番好きな話は第28話「うたかたの…」である。 

この話はセカンド・コンタクトや幻の疾走から始まる、クリッターやガゾートを巡る話の完結編であり、鬼才川崎郷太監督が、監督・特技監督・脚本をすべて務めた意欲作だ。(平成ウルトラマンでは本編監督が特技監督を兼ねることは珍しくないが、脚本まで書いたのは未だに川崎氏のみである。) 

この話はクリッター殲滅作戦に追われるGUTSが同時に突如現れた怪獣ジョバリエにも対応しなければならない、二重苦の中で、GUTS隊員最年少で実戦経験の浅いヤズミとシンジョウの妹であり恋人のタクマをガゾートに殺されたマユミの二人をメインとして描かれている。

そしてこのうたかたの…では、セカンドコンタクトで示された怪獣との共存、平和のためという口実で武装を強化することへの疑問、怪獣は何故現れるのか、ウルトラマンは何故戦うのか、決して長くない本編の中で、これだけの多くのテーマを詰め込み、視聴する人たち皆に問題提起を促す、ある意味では問題作ともいえる作りとなっている。 

クリッター殲滅に対するGUTS間での対立、自分がティガとして戦う理由について苦悩するダイゴ、TPC武装論を振りまきながらも実際の戦場とのギャップに恐怖を覚えるヤズミとその考えを批判するマユミとのぶつかり合い。  

僅か一話の中でこれだけの課題を盛り込んでいながら、この回で異色といえるのはあえてそれらの問いに対して明確な答えを示さないところだろう。 

クリッター殲滅作戦決行時に、クリッターの群れに対して攻撃を仕掛けるレナたちだったが、その攻撃は外れ、さらにクリッターは遥か宇宙への彼方へと去っていく。 

レナはその理由をクリッターたちが人類に愛想をつかしたのだと推察するが、それはあくまでレナの個人的な考えにしかすぎず、クリッターたちが地球を去った本当の理由はあくまで不明である。ヤズミとマユミのぶつかり合いもそれ自体が事態を好転させるわけではなく、あくまで二人の個人的な意見の衝突にしかすぎず、彼らは特に分かり合うわけでも和解をする訳でもない。(それでもラストではそんな二人が歩み寄りを始めるという重い中にも希望を持てる終わり方ではあるが) ダイゴの苦悩も最終的に自分自身がウルトラマンとして戦う理由を見つけただけで、ウルトラマン自体が戦わなければならない理由を出したわけでは決してないのだ。長いウルトラシリーズの中で少なからず矛盾を孕みながらも放置されてきた様々な問題点を真正面から付きつけつつも、それに対し意図的に明確な答えは出さず、視聴者に考えを促す、だからこそこのうたかたの…、はティガの話の中でも名作にして問題作という現在でも賛否両論溢れる評価を得ているのだ。

個人的には話の内容ももちろんだが、終盤怪獣ジョバリエが本格的に暴れだす中、主題歌Take Me Higherのイントロが流れ出し、ヤズミがマユミから受けた言葉を思い出し叫びながら走り、ジョバリエに攻撃を始める中、ダイゴが「ティガよ…、何故戦う、何のために戦う…、ティガァァーーーッ!」と叫びながら変身しジョバリエに挑むシーンは、重く鬱屈としたそれまでの展開から一気に解放されるのを感じるとともに、それまでの話では曖昧だったティガとダイゴの意識の関係を、スパークレンスにダイゴが語り掛けティガの名を叫びながら変身することで、明確にダイゴの意識が主体(つまり後の作品でいう人間ウルトラマンである)と定めるという後のシリーズにおいても重要な位置づけとなったシーンや、ジョバリエに追い詰められた中でティガがGUTSメンバーを想起しながらも「これが答えなのか…?この人達を守るためなのか…?仲間だから…?皆が好きだから!!」と自分なりにティガとして戦う理由を見つけ、ウルトラヒートハッグでジョバリエを撃破するシーンは先ほどのTake Me HigherのがBGMとして流れている中で大きなカタルシスを感じられ朝焼けに映るティガの美しさと合わせて、ティガの中でも特に名場面だと思っている。  

そして、戦いが終わったのち、後始末に追われるマユミをヤズミが助け、二人が手を取り合うシーンでこの話は幕を閉じるが、これは先ほどにも言った通り、意見や考えの異なり対立した二人が、完全な和解はしないながらも、お互いに歩み寄り手を取り合って前に進んでいくという、一筋の希望を示しているといえるだろう。 

 

このようにうたかたの…ではそれまでのウルトラマンにおいては放置されていた問題に対して、疑問点を真っ向から付きつけつつもその問題点に対してあえて明確な答えを出さないという異例の構成であり、良くも悪くも平成ウルトラマン始まりの一作であったティガだからこそ出来た話といえるかもしれない。 

それでも、この話で完全に擁立された人間ウルトラマンや怪獣と人間の共存というテーマは、後のシリーズにおいても形を変えながら受け継がれており、そういう意味でもこの回が後の作品に残した影響は決して少ないものではない筈である。 

(完)