泡沫

どうも、とりあえず自分の好きなものについて適当に語るだけの簡単なブログです。暇な人や物好きは見てってね。

共存の難しさ、ティガのターニングポイント、セカンド・コンタクト。

私がウルトラマンティガの序盤で一番好きな話は第6話のセカンド・コンタクトである。この話は、ホリイ隊員を主役にしたエピソードであり、あのうたかたの…まで続くクリッター3部作の始まりの話である。 

物語は、突然現れた強い電磁波を放つ黒い雲にTPC飛行艇が潜入するところから始まる。飛行艇にはホリイ隊員の恩師であるミズノ博士を始めとした調査クルーが登場しており、雲の中に入った途端、そこに潜んでいた謎の生物に遭遇して消息を絶ってしまう。 

ダイブハンガーのGUTS司令室内でその事実を知らされたホリイ隊員は、その雲に潜んでいるのが、電離層に住んでいると言われている未知の生命体クリッターではないかと推測する。 

蜘蛛の調査及びミズノ博士たちの捜索にダイゴ隊員が出動するものの、彼も雲の中に取り込まれ、連絡が取れなくなるのだった。 

相次ぐ非常事態に出動したレナとシンジョウ隊員の前で、その雲は落下し、中から変形怪獣ガゾートが現れ、街を破壊し人々を襲い始めた。 

両隊員が応戦する最中、ホリイ隊員はガゾートがクリッターが人間が流した電磁波の影響を受けて変異した存在だと推測し、彼らはそんな人間の愚行の被害者だと考える。 

一方、ヤズミ隊員が何らかの言葉と思わしき謎の音声を受信し、ホリイ隊員はそれを自身の発明で翻訳する。そこからは「オイシソウ!」というガゾートの幼い少年のような声が発させられ、ホリイ隊員は彼らに暴れないでほしいと話しかけるが、ガゾートは自分に話しかけてきた存在が分からず、困惑する。 

イルマはガゾートの元へ向かおうとするホリイに怪獣と対話するつもりかと聞くと、ホリイは同じ地球に住む生き物なら共存はできると信じている、空想することは素晴らしいことであり、自分はミズノ博士の遺志を継ぎたいと強い決意を口にし、イルマはそれを笑顔で送り出す。 (後の話でクリッターの性質や自分が遭遇した経験を考えると仕方ないこととはいえ、ミズノ博士の考えをホリイ本人が完全否定してしまっているのは何とも皮肉である。)

一方でガゾートの進行は尚も止まらず、登場していたウィング2号を撃墜されたシンジョウとレナが銃を片手に懸命に立ち向かっていた。 

ホリイは現地に到着すると彼らに怪獣と話をするから刺激しないでくれと頼む。当然、反発するシンジョウだがホリイの強い決意を秘めた目を見て、黙って彼が載ってきたウィング一号へと向かう。  

遂にガゾートと対面したホリイ。(ちなみにこの時、ガゾートはミズノ博士たちが着ていたと思わしき服を吐き出している。) 

イルマがクリッターが地球に住む生物だとしても人間とはかけ離れた価値観の相手であり本当に共存できるのかと懸念の意を示す中、ホリイはガゾートに自分の名前と暴れて街を壊したり友達である人間を襲ったりしないでほしいと伝える。 

ガゾートは友達という言葉に反応し、ホリイは「そうや!僕も君も同じこの星に住む仲間や!」と彼らに呼び掛ける。 

怪獣と人間、同じ地球に生きながらも異なる二つの存在の対話が成立するかもしれないと思われた矢先…! 

「トモダチハ…、ゴチソウ!トモダチハ、ガゾートノ、タベモノ!」 

ガゾートが発した言葉にホリイは絶句する。

そう、友達というのはガゾートにしてみればただ単に捕食する対象でしかなかったのだ。(イルマはクリッターが電離層で自分たち同士で共食いをしながら生きてきたと推測している。)すなわち、ミズノ博士もガゾートと出会った結果、トモダチと認識され彼らに捕食されたのである。  

「トモダチ!!」、無邪気な声を挙げながらも口を開けてホリイに迫るガゾート。絶望し叫ぶホリイを救うべく銃撃しながら怪獣へ向かうレナの叫びが繭の中にいたダイゴに届き、ダイゴはウルトラマンティガに変身し、ガゾートに立ち向かう。 

激戦を繰り広げるティガとガゾート。(この時に自分に立ち向かうティガをトモダチと認識し、腕に噛みつき捕食しようとしている他、口を開けてトモダチと連呼している)。そして壮絶な空中戦の果てに、スカイタイプの放ったランバルト光弾でガゾートは倒される。そして彼らは本来の姿であるクリッターの姿に戻る。 まるで天使みたいだと見とれるレナにホリイは見かけはなと言いながらも同時に美しいクリッターをミズノ博士に見せたかったと呟く。そして物語は夕日の中、無邪気な笑い声を挙げながら空へと昇っていくクリッターたちを映して幕を閉じる。 

この話の脚本を担当したのは、後にティガの実質的なメインライターを担当することになる小中千昭氏であり、監督は同作品において様々な名編を送り出すことになる川崎郷太氏である。(ちなみに特技監督は今のニュージェネのプロデューサーである北浦嗣巳氏である。) 

このセカンド・コンタクトは後のウルトラシリーズにおいても度々示されることとなる人間と怪獣の共存というテーマを最初に取り扱った話といえるが、この話に登場するガゾート=クリッターは確かに人間と同じ地球に生きる生物であり、会話も成立する程の高い知性を持っているが、同時に自分たちを含めた存在をトモダチ=捕食対象としか見做さない恐ろしさを持っており、とても共存が出来る存在とは言えない。(だが、そもそも同じ人間でも国や住んでる地域によって、考え方や価値観が違うのは当たり前であり、そういう意味ではクリッターたちの考え方も電離層で生息していた彼らにとってはそれが当たり前であり、一概に否定できるものではない) そういう意味でも、このエピソードは後のウルトラマンの同様の話とは大きく異なっているだろう。実際、人間同士で上手くいっているとは到底言えないので、未知の知的生物が出てきて、会話が成立したとしても、共存できる可能性は限りなく低いといえるかもしれない。(またホリイたちはクリッター=ガゾートを人間の愚行の被害者として見做していたのに対し、当の彼らはただ単にトモダチ=餌を食べることしか考えておらず、倒された後もそれまでのことなんか関係ないとばかりに無邪気に笑いながら、空へと昇っていくのも興味深い) 

 ちなみにこの話を書いた小中千昭氏自体は、怪獣との共存よりも人間が知らない世界に住んでいるクリッターのロマンと彼らが変異したガゾートの不気味さと不条理さを描いた短編ホラーSFのつもりだったのだが、川崎郷太氏は人間を捕食しながらも、最後には笑らいながら空を去っていくクリッターに疑問を持ち(この時のクリッターの処遇をめぐる両者の対立は切通利作氏の地球はウルトラマンの星が詳しい。)、後に幻の疾走にガゾートⅡを出し(本来は別怪獣の予定だった)、さらにはあのうたかたの…に繋がっていくことになるのである。(クリッターが去っていくときに天使見たいと呟くレナが小中氏、見かけはなと付け加えるホリイが川崎氏の心境だろう。)つまり、この時、クリッターの存在に川崎氏が疑問を持ったことが、後の幻の疾走でティガに変身したダイゴが腕の怪我を気にしたり、うたかたの…で自分が戦う意味をティガに問いかけながら変身し、明確にダイゴの声で喋るモノローグに繋がっていくので、平成3部作において根幹をなす要素である人間ウルトラマンという概念の成立においてもこの話がもたらした影響は大きいといえ、またこのセカンド・コンタクト~幻の疾走、そしてうたかたの…と連続した話が展開されていくのが、ウルトラマンティガを過去作のような一話完結ではなく、一つの完成されたドラマとして成立させていく原動力となったともいえる。(もっともティガという作品を一つのドラマとして本格的に成立させたのは長谷川圭一氏の功績が非常に大きいが。)

このように、クリッターという存在の恐ろしさや浪漫、怪獣との共存、未知の存在と対話することの難しさ、様々なテーマを内包した本作はウルトラマンティガという名作の中でも特に優れた一編の一つであり、また、ティガや平成3部作、さらにはウルトラシリーズという作品全体を通してみても最初のターニング・ポイントとなった話といえるかもしれない。